この本では、精肉店、洋品店、文房具店、書店、眼鏡店、玩具店など、多くの個人店が紹介されている。
世の中の流れに取り残されてシャッター通りとなった商店街の中でも、現役で商いを続けているお店がある。
お店によっては関東大震災や戦争・空襲を乗り越えてきたお店もある。お客で溢れ返った戦後と高度成長期・バブルの時代、そして現在・・・。
そんな、世の中の激変に耐えながら、同業者の多くの個人店が閉店した中でもしっかりとお客に選ばれ、まだまだ現役で商いを続けているお店がある。
この本で紹介されているお店の店主には、それぞれの歴史がある。個性がある。
腕利きの職人だったり、その店主ならではの商売に対する心意気や工夫、こだわりもある。
喫茶店でのおしゃべりの続きにご婦人方がやってくる、そんなご近所サロンのようなお店もある。
この本は、そんな店主の個性がにじみ出た、歴史のある個人店ばかりを取材した本だ。
この本の著者は、ノンフィクションライターの井上理津子氏。
著者が、この本を企画したきっかけは、
「ここにあったあの店が、いつの間にか消えている。チェーン店に変わっている。そんな光景にでくわすたび、さみしいなあ、と思う。大変失礼な物言いだが、個人商店が『絶滅の危機に瀕している』という思いに駆られたこと」
からだそうだ。(あとがきより)
では、1つだけ、この本で紹介されているお店の中から横浜市鶴見区にある、今は寂れたシャッター街の中でも現役で商いを続けている肉屋さんの紹介をしよう。
この店の店主は、7年間の修行を先輩の背中を見て育った職人だ。肉のプロだ、肉の目利きだ。
カレー肉を買うにも、調理時間を聞いて肉を選んでくれる。トレイに載った肉を選んで買うだけの、今のスーパーでは得られないことだ。
お店では焼き豚も作る。コロッケやハンバーグ、カツ、肉団子も売っている。 お客が言うには、デパ地下なんて目じゃないお味だそうだ。
そんな多くの個人商店を取材した著者は言う。
「個人商店は『町の宝』だと確信した」(あとがきより)。
その『町の宝』を取材した著者渾身のお店ルポ。 是非お読みください。
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紙の本1650円(税込) kindle(電子書籍)1430円(税込)
